淋しいお月様

けれど、こちらから電話を切るなんて、失礼にあたる態度をとることはできなかった。

『ちょ、っと！？　も、しもし？』

「お客様、電波が少し乱れているご様子ですが――」

私は冷静に対処する。

『もういいわっ！　――ガチャン！』

電話はそこで切れた。

私もちょっとキレた。

電波が悪いのは、そっちのせいだろう。

普通に対処できるお客からの入電は、ひとつ終えると胸がすっとするけれど、クレーム客とか、こういった変なお客からの電話は、終わるたびにイライラが残る。

気を取り直して、私は次のコールを待った。

『ピピッ』

「いつもありがとうございます。にこにこカードセン……」

『住所変更！』

「かしこまりました、住所変更でござ……」

『いいから、早くして！』

何だか焦っている様子だ。