「よし、じゃあラスト1曲、行くかな」

セイゴさんは上半身を起こす。

私は芝生が心地よくて、横になったままでいた。

「セイゴさんの作った歌が聞きたいな」

リクエストしてみた。

すると彼は、あたまをポリポリと掻いた。

「俺の曲は……みんなのものだから」

私のこころはしゅん、と萎んでしまった。

「そうね。ごめんなさい」

「いや、でもいつか、君のために歌うよ」

なんて素敵な科白。

君のために歌うよ。

こんなこと、云われたの初めてだ。

みるみるうちに、私のこころは膨らむ。

乙女ゴコロは浮き沈みしやすい。

困ったもんだ。

もう、乙女なんてトシじゃないのに。

まるで、恋を覚えたての少女になってしまう。

セイゴさんが、そうする。

セイゴさんが、私を変えてくれる。

セイゴさんの色に染まることが、私の幸せ。