淋しいお月様

「あ、星羅ちゃん。射的あるよ、射的」

ぱっと話題を変えるセイゴさん。

「射的かぁ。昔、夏祭りとかでよくやったけど、うまくいかなかったな」

「俺、こういうの得意」

そう言って彼は、親指をぐっと上げた。

「あげちゃったペンギンの代わりに、何かとってあげるよ」

セイゴさんは射的コーナーの方へ歩み寄った。

コインを入れるところに百円を投入すると、音楽が鳴り始め、ぬいぐるみやらおもちゃの鉄砲や
らキャラクターの置時計やらが左右に動き出した。

「見てて。一発で決めるよ」

自信満々のセイゴさん。

その瞳は、子どもみたいにキラキラしている。

「どれが欲しい?」

「あ~、じゃあ、あの大きなウサギのぬいぐるみ」

「的大きいな。簡単にとれるよ」

彼は鉄砲を取ると、顔の横に掲げ、片目を閉じて的を絞った。

ぱんっ。

コルクが飛び出す音がして、次の瞬間、ウサギのぬいぐるみは大きくのけぞって、下に落ちた。

「すごい……」

「な。こういうの俺、得意なんだ」

落ちたぬいぐるみは、レーンをくぐって、私たちの元へと転がってきた。