淋しいお月様

私は中座して、鞄の中からスマホを取った。

着信:静哉――。

ええっ、静哉?

私は思わず電話を取ってしまった。

「もしもし、静哉――?」

『ああ、俺。久しぶり。元気にしてた?』

「ほんとに静哉なの?」

まるで夢みたいだ。

受話器から聞こえてくる声が、懐かしくてくすぐったい。

『ああ。連絡しないでごめんな』

「静哉――」

私は思わず浸ってしまった。

一体、何ヶ月ぶりの連絡だろう。

気の遠くなるほどだ。

その間、私がどんなに淋しい思いをしてたか――。

静哉、解る?

こころの中で、私は唱えた。

と、ふと視線を感じて、私ははっとした。

セイゴさんが、悲しそうな顔で、私を見ていた。

「ご、ごめん、静哉。また後でかけるから――」

そう言って、私は一方的に電話を切った。