淋しいお月様

「セイゴさん、記事になるって知ってたんだ……」

急いで家に帰るなり、私は職場であった一件について、セイゴさんに問い質していた。

「うん。3日ほど前かな。事務所の方に報告があって、記事にしますってことで……」

テーブルを挟んで、私とセイゴさんは向かいあっていた。

が料理を作って待っていてくれたけれど、今はそれどころじゃなかった。

せっかくだけど料理は、まだキッチンに置いたままだ。

「何で黙ってたの?」

セイゴさんはあたまをぽりぽりと掻いた。

「星羅ちゃん、そういうの読まないひとだと思って……。あまり騒がない方がいいかなって……。俺の過去もバレるわけだし」

「立川絵里さんのこと?」

「うん……」

「私が読まなくても、周りは読むわ。私だって、記事になったってこと、知りたくなかったよ。平穏でいたかったよ」

だけど、彼はミュージシャン。

そんなひとの近くにいるってことは、少なからず安穏ではいられないってこと、あたまでは解っていたけれど。

「……噂になって、困る? もう俺とは一緒にいられない?」

すがる子犬のような目をして、セイゴさんは私を見つめる。

「……」

何か言いかけようとした時に、私の携帯が鳴った。