淋しいお月様

そしてクマさんはまた、雑誌に目を落とし、SWEET HEAVENと呟いた。

ユアさんは、はっと身を起こし、クマさんが開いている記事を覗き込んだ。

葵ちゃんも、記事を覗く。

そして、3人の6つの目が、私に向けられた。

――しまった。

撮られた写真と、今日はまったく同じ服を着ていた。

「ま、さか……」

ユアさんの目がみるみる大きく見開かれる。

「……、いや、違うって」

私は片手をぶんぶん振って、笑って見せた。

「同じ服なんて、世の中にたくさんあるでしょ」

「でも、このペンギンのキーホルダー……」

葵ちゃんが呟くと、私はぎくっとしてしまった。

記事には、スーパーで並んで歩く、私の全身が映っていたのだ。

「アニエスベーの鞄に、ペンギンのぬいぐるみのキーホルダーって……」

ユアさんが鋭い視線を送ってくる。

「これって、星羅ちゃんなの?」

もう、これ以上シラを切ることはできない。

「……うん」

「タクミの彼女って、星羅ちゃんなの!?」

ユアさんが、フロアに響くような大きな声を出した。

「……うん」

彼女ではないけれど、その写真は私そのものだ。

「――……」

ユアさんは私をじっと見つめると、やがて視線をふっと逸らして、駆けて出て行ってしまった。