淋しいお月様

おにぎり、サンドイッチ、お弁当、パスタ……。

色とりどり並ぶ食べ物たち。

私はいつも目移りしてしまう。

けれど、お金がない。

いつものように私は、おにぎり2個をかかえ、レジへと持って行った。

「いらっしゃいませ」

商品をスキャンしてくれる店員さん。いつもの女の、笑顔が優しい店員さんだ。

「あの、申し訳ないんですけど、おでんのおつゆだけ、ただでもらえませんか……?」

カップの味噌汁を買うと、120円もしてしまう。

それなら、おにぎりがもうひとつ買える値段になる。

時間が経ったら、おでんのつゆは水に流されるということを知っていたから、私はいつもおでんのつゆをもらっていたのだ。

「はい、よろしいですよ」

毎度のことだと思っているのだろう。店員さんは驚いた様子も見せずに、つゆを入れたおでんのプラスチックのカップを渡してくれる。