私たちはバスに乗って、家から遠い、海辺の街に来ていた。





バスに乗っているときも、今も、春斗はずっと無言。


ただひたすら、私の手を握っているだけ…。




「あのさ、春斗…?」



「里桜。ちょっと聞いて欲しいことがある」



私の言葉を遮るように、彼は言った。




私たちは、砂浜に座った。


すると、彼がゆっくりと話し始めた。



「俺、東京で手術受けたって…言ったじゃん?その、手術受けた病院が、この街にあるんだ。
ここから、歩いて10分くらいのところに…」



「そうなんだ…?」



「うん。それでさ、入院してるとき、いつも窓からこの海を見ていたんだ。
で、手術の前の日は、この砂浜に座って、里桜のことを想っていた」



私のこと……?