【泪side】


今にも泣き出しそうな瞳に、
正直戸惑った。



俺の服の袖を掴むその手は小さく、
だけど震えは大きくて、


涙を溜めるその大きな瞳は実に儚げで、
守ってやりたくなった。








あんなにも強いと、
絶対敵わないと確信した相手に、

今度は守ってあげたいだなんて
どうかしてると自分だって思う。





でも理屈じゃないんだよ、これは。




俺がこいつを求めてる。



ヒシヒシと伝わってくる感情に、
俺は身動きが取れないんだ。









"何て言ったらこいつは元気になる?"








"何て言ったらこいつは喜ぶ?"








"何て言ったらこいつを救える?"









"何をしたら
こいつは振り向いてくれる?"







何を考えたって、
何を言ったって、
何をしたって、



きっとこいつは救われない。





今俺が何かをしたところで、
こいつが堕ちるのを止めないことは、


俺には目に見えてわかった。









せめてもと思い、
こいつの小さな手を包んだ。







それだけでこいつの表情は、
ほんの少しでも和らいだ気がした。





これだけのことなのに緩むこいつは、
きっと誰よりも繊細で、弱ってる。




誰か…誰かって、
叫んでいるように見えるんだ。