「さてと」

石の下でぐったりとしている毛玉を木の枝でつっつき、動かないのを確認した智紘は、パンパンッと手についた砂を払い落とし、立ち上がった。

「うるさいのもいなくなったし、さっさと帰ろ」











《おぉ。下僕。よく来たな》

「……」



生欠伸をしながら部屋に入った智紘は、唖然とした。


「おい、毛玉。なぜお前がここで寛いでいる。あの石の下からどうやって脱出した」

《それは、あれだな。数週間前からここは私の住処となったのだ。脱出法は企業秘密なのだよ》


我が物顔でソファーにデンッと乗っかっている毛玉がそこにはいた。

「ここ、俺の部屋なんだけど。ってか、どんな企業だよ!!」
なかなか良い住み心地だぞ。と自慢げに言う毛玉を見た智紘は、額を押さえて疲れたような声を出した。

《なんだ、そうだったのか。では、貴様の部屋であって、私の住処でもあると言うことだな。無礼者だが仕方が無い。住まわせてやろう。感謝しろ》
「…は?」

《貴様のものは、私のものだ》
「どっかのガキ大将か!!」


コントのようなやり取りに疲れ果てたらしい智紘は、ガクッとしてベッドにダイブした。


《では私は風呂に入り、優美なボディーを取り戻してくる。風呂の外での護衛、頼んだぞ》
何を言ってるんだ何を。


転がっているのか滑っているのか不明だが、滑らかに風呂場へ消えていった毛玉を片目で追った智紘は突っ込む気も失せたように脱力した。