高らかに言い放った毛玉に何かが切れた感覚を自覚しながら無表情で呟く智紘。


《ブギャッ》


無情にも頭の上から毛玉を払い落とす。
《何を…っ!!グエッ》



地面に転げ落ちた毛玉は、もじゃもじゃの毛がクッションになったのか、ボヨンと一回はねて、体制を立て直し、自分を地面に払い落とした張本人に講義をしようと声を上げた瞬間、全身に強い圧迫感を感じた毛玉は、潰れたカエルのような声を出した。


その原因は当然のような顔をして見下ろしている智紘。その足は毛玉の体の上に下ろされている。




智紘はしばらくその状態を保っていたが、ふと視線を彷徨わせ、1点で視線を止めた。

《このっ!このっ》





一方、智紘の足から逃れることに必死になっていた毛玉は視線の先にあるものを手繰り寄せてニヤリと口角をあげた智紘に気づかない。



「…妖怪って、人間より体丈夫なんだよな」



ぼそっと聞こえてきた呟きに、嫌な予感がした毛玉はそろーっと上を見る。


《…あの、それは………》


冷や汗を流しながら智紘が持つソレに釘付けになる視線。

「大丈夫、大丈夫。これくらいじゃ死なないって。人間じゃないし」


《………ぃ》


先ほどまでの無表情とは一転してにこやかな笑顔を貼り付け、棒読みで話す智紘はそのままソレを毛玉の上に乗せる。






《ぎゃぁああああああっっ!!》
状況を理解した毛玉の悲鳴は、ソレが乗った瞬間、プッツリと途絶えたのだった。







「……まぁ、三途の川くらいは拝めるかもね」








毛玉の意識が飛ぶ直前、聞こえたその言葉は悪魔のささやきだと本気で思った哀れな毛玉だった。