「・・・だけれど・・・」


「姉様、退いて。」


「いや。


沙捺が儀式をやめるというまで動かないわ。」


「強情な姉様だこと。


遙香。」


「はい。」


遙香は私の目の前に立ち、思い切り肩を押した。


「・・・沙捺様の邪魔は為さらないほうが宜しいかと。」


上から視線を落とす。


どこか闇をまとったような瞳。


「「「夏神の降りたつ地となり、我ら夏目の巫女の出征の地に成りうる村よ。


我らが夏目の巫女の願いとして復興を願う。


夏神よ、我に降り立て!」」」


望美、希美、沙捺が同時にいい、手を天にかざす。


しばらくして、望美の手が光った。


「・・・夏神よ、依り代となり、貴方の手助けをいたします。


401代目、夏目望美。


夏目の巫女の姉として、十分に手助けをいたします。」


「今日(こんにち)の依り代は401代目の姉。


再生の儀を施したれ。」


沙捺が言うと、望美の目の色が変わった。


「・・遥か昔より、信仰されてきた夏目の巫女。」


望美が望美でない声で言う。


「我は・・・夏神なり。


夏目の巫女を、利用する立場なり。


願いはなんじゃ、叶えたろうぞ。」


「夏神村の、再生を願うなり。」


「・・・400代目、夏目の巫女よ。


叶えたり、その願い。」


望美・・・いや、夏神は透き通るような声で言う。


いい終わり、望美の体が前のめりに倒れる。


しばらくして神社の外から轟音が聞こえた。


私は体制を整え、表へ向かう。


神社の鳥居付近には幻覚で見た村人らが立っている。


しかし、全身が血にまみれたように真っ赤。


かろうじて見える目は虚(うつ)ろ。


「紗夏ちゃん、僕らも応戦しよう。


・・・と、言っても攻撃はされてないから応戦ではないかな。」


雅さんが言い終わると同時に村人の一人が地面へ吸い込まれた。


「・・へっ?」