カリス姫の夏

すると、みゅーは何か捜すようにきょろきょろと廊下の方を見た。目的の物は見当たらなかったらしい。


「ねえ、莉栖花。
一緒に来た彼氏は?」


「藍人くん?
それがね、今お金無いから飲み物はいらないって言ったら、それはだめだとか言っちゃって、買ってきてくれるって……

学校でも玄関で待っててさ、みゅーの病院行くって言ったら一緒に行くって言うの。

ちょっとさ……ウザいよね」


「なに、贅沢言ってんのよ。のろけにしか聞こえないんですけど」
とみゅーにたしなめられ、私は肩をすくめた。


いや、そんな事より伝えなければならない事がある。
何より先に、みゅーに言わなければ。


「そうそう、みゅーに謝んなきゃなんなかったんだ。

あのね、結局、わたしの情報流した犯人は大体分かって、それで私の方のトラブルは大体、解決したんだ。

私もSNS関係は一切足を洗って、動画のアップも取り下げて。
まっ、どこにコピー残ってるかなんて把握しきれないし、それはもう仕方ないけど、後はさ、時間が解決してくれると思うんだよね。

だけどね、どうしてもみゅーの情報を改ざんした犯人が分かんないの。
だいたい、目的も分かんないし……」


「あー、あれ?」

と、みゅーは宙に視線をさまよわせた。
そして、声をひそめ信じられない言葉を放った。


「あれ、私。
改ざんしたの私よ」


言葉の意味を処理できず、数秒間なにも無い時間が過ぎる。


「えぇぇぇーーー?」


やっと理解できると驚きは、大声となった。みゅーは慌てて人差し指を口に当て「しっ」と、ジェスチャーした。


「どっ……どっ……どういうこと?」


無様にうろたえる私とは対照的に、みゅーは憎らしいほど落ちついている。


「ほらさ、糖尿病だって知られたくないって言ったでしょ。
おばあちゃんの病気みたいだからって。
まっ、偏見だけどね。
どうせ1時間だし、知らなくっても平気だって思っちゃったのよ。

ホントのこと言うと、ちょっと試してみたかったの。病院のパソコンに入れるか。
自分の力、試してみたいっていうのかな。

まさか入れると思わなかったんだけど、やってみたら案外簡単に入れちゃって。
病院なんて個人情報の巣窟なのに、セキュリティーすっかすかなんだよね」


犯人は、自己弁護するように責任を転嫁した。私は怖い物見たさの好奇心を止められない。身を乗り出し、尋ねた。


「でも、どうやって?」