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「莉栖花、あんたさー、いい根性してるよね。
病室内は飲食禁止なんですけど」
みゅーのベットを取り囲むカーテンは隙間なく閉められている。というよりも、病室に入るなり有無を言わさず閉めたのは誰あろうこの私で、しかも目的が自分自身のエネルギー補給なのだから、そりゃあみゅーも文句の一つでも言いたくなるだろう。
ベッドから足を下ろし座るみゅーは、目の前の円椅子に座る非常識な友人を冷ややかな目で見た。
私はせめてもの良心からできるだけ早く手に持つ菓子パンを処理しようと、口いっぱいにほお張りながら、見苦しい言い訳に終始した。
「だって……さ……
ウッグッ
始業式おへて……
がっこーから…まっすぐ来たんだ…よほぉ
しかも…さ グッ
お金無いから、自転車でここまで……
さっ…30分こいで……」
「えー?
莉栖花、金欠なの?
バイトしてお金入ったんじゃないの?」
と、みゅーは大げさに驚く。
口の中のパンをやっとで飲みこみ唾液で流し込むと、自分の不幸な身の上をわずかばかりの脚色を加え説明した。
「ほら、この前北海道行ったじゃない。
できるだけお金かけない方法で行ったんだよ。
それでもけっこうかかっちゃって、バイト代飛んじゃったのよ。
だいたい華子さんの仕事って、今思ったら大した収入になってないんだよね。
ピンはね、されてたんじゃないかな。
今はね、お母さんからもらった昼ごはん代をちびちび貯めて、ルーナのチケット代集めてるの。
苦しいんだから」
「にしてもさ、糖尿病患者の前でクリームパン食べる?
そのゴミ、持って帰ってよね。
みつかったら、私食べたと思われちゃうから。
こんなのさ、吉元さんに見つかったら殺されちゃうよ」
と、みゅーは呆れ顔だ。
パンの袋をカバンに押し込み、こもる暑さに耐えかねて、シャーとカーテンを開いた。
「そういえば、華子さん。
結局、ここの外来で働いてるんでしょ」
なにげなく口をついた私の話題に、みゅーはニヤニヤと意地悪く笑い、顔を寄せた。
「そうなのよ。
この前さ、外来に用事あって行ったら吉元さん、いてね。
一番新人のくせに、若い看護師叱りつけてて……
あれは長続きしないわ」
その姿を想像し、私もうなづく。
「だろうね」
私は心の中で手を合わせ、若い看護師の身の上に起こった不幸が早く立ち去るよう祈った。願わくば、華子さんが外来の仕事に見切りをつけ新しい仕事につきますように。
「莉栖花、あんたさー、いい根性してるよね。
病室内は飲食禁止なんですけど」
みゅーのベットを取り囲むカーテンは隙間なく閉められている。というよりも、病室に入るなり有無を言わさず閉めたのは誰あろうこの私で、しかも目的が自分自身のエネルギー補給なのだから、そりゃあみゅーも文句の一つでも言いたくなるだろう。
ベッドから足を下ろし座るみゅーは、目の前の円椅子に座る非常識な友人を冷ややかな目で見た。
私はせめてもの良心からできるだけ早く手に持つ菓子パンを処理しようと、口いっぱいにほお張りながら、見苦しい言い訳に終始した。
「だって……さ……
ウッグッ
始業式おへて……
がっこーから…まっすぐ来たんだ…よほぉ
しかも…さ グッ
お金無いから、自転車でここまで……
さっ…30分こいで……」
「えー?
莉栖花、金欠なの?
バイトしてお金入ったんじゃないの?」
と、みゅーは大げさに驚く。
口の中のパンをやっとで飲みこみ唾液で流し込むと、自分の不幸な身の上をわずかばかりの脚色を加え説明した。
「ほら、この前北海道行ったじゃない。
できるだけお金かけない方法で行ったんだよ。
それでもけっこうかかっちゃって、バイト代飛んじゃったのよ。
だいたい華子さんの仕事って、今思ったら大した収入になってないんだよね。
ピンはね、されてたんじゃないかな。
今はね、お母さんからもらった昼ごはん代をちびちび貯めて、ルーナのチケット代集めてるの。
苦しいんだから」
「にしてもさ、糖尿病患者の前でクリームパン食べる?
そのゴミ、持って帰ってよね。
みつかったら、私食べたと思われちゃうから。
こんなのさ、吉元さんに見つかったら殺されちゃうよ」
と、みゅーは呆れ顔だ。
パンの袋をカバンに押し込み、こもる暑さに耐えかねて、シャーとカーテンを開いた。
「そういえば、華子さん。
結局、ここの外来で働いてるんでしょ」
なにげなく口をついた私の話題に、みゅーはニヤニヤと意地悪く笑い、顔を寄せた。
「そうなのよ。
この前さ、外来に用事あって行ったら吉元さん、いてね。
一番新人のくせに、若い看護師叱りつけてて……
あれは長続きしないわ」
その姿を想像し、私もうなづく。
「だろうね」
私は心の中で手を合わせ、若い看護師の身の上に起こった不幸が早く立ち去るよう祈った。願わくば、華子さんが外来の仕事に見切りをつけ新しい仕事につきますように。
