カリス姫の夏

ナイトの言葉を聞き続けることはできず、私は左上のバツ印をクリックした。


なぜだか涙は出なかった。ただ虚しさだけが、私の心に渦巻く。


ナイトを取り囲む敵で、大地は埋め尽くされている。地面の色さえ分からないほどの無数の敵の中で、ナイトは管理者しての責任を果たそうと必死で戦っている。

手に持つ剣は、けっして特別な物ではない。鎧(よろい)は着てもいない。そう分かっていても、立ち向かっている。


逃げることもできただろうに。
知らんぷりして、雲隠れすることもできただろうに。

でも彼は、気持ちを伝えようとその場にいる。



そんなナイトに、私の気持ちを伝えたい。その方法が、今は一つしか思いつかない。


私は自分自身の虚無感に立ち向かうように、自分のブログを開いた。そして、一カ月ぶりにブログには文字が並んだ。


ブラインドタッチはお手の物だったのに、今日は指が思うように動かない。結果、普段の倍以上の時間をかけて、半分も思いを打ち込めなかった。

パソコンの画面で見てしまうと、思いのほか短いその手紙を、私は自分自身で読み返した。




『ナイトさま。

あなたがこのブログを読むかどうかは分かりません。
でも、見てくれると信じて、私はこのブログをアップします。

何よりも伝えたいことは感謝です。
本当にありがとうございました。

そして、ごめんなさい。

私はナイトの国では、はきはきと自分の意見を言える明るい子で、お姫様で、みんなのアイドルだった。

でも、リアルの私は人の目ばっかり気にして、息をひそめて、ひそめすぎて上手に呼吸もできなくなっていました。

それでもがんばって学校に行けたのは『ナイトの国』があったから。
辛くっても、みんなに会って話聞いてもらえるって思ってたからです。

ナイト。

私ね、こんなに学校嫌いなのに、高校入ってから無遅刻無欠席なんですよ。
すごいでしょ。
笑っちゃうよね。

でも、私もきっと欲張りすぎたのだと思います。

ネットの力を見せてやりたい、ネットの関係がリアルよりもすごいって言わせてやりたいって思っちゃったんですね。
そして、結局はみんなに迷惑をかけた。

本当にごめんなさい。

でも、これだけは間違いない。
ナイトの国は必要だったんです。
少なくとも私には。
支えてもらっていたんです。

本当に、本当にごめんなさい。

そしてありがとう』