白銀のヴィーナス






「……オイオイ、マジかよ」



さて、どうしたものか。




上手いこと撒けば済む。


そう簡単に思っていたが、どうやらそういう訳にはいかないらしい。


今の状況が自分にとって不利なものだということを嫌でも気付かされることになってしまったから。



「……チッ。まだ出てくんのかよ」



行く先々で現れる新たな追っ手。


否、それはどちらかと言えば先回りされていると言った方が正しいだろう。



細道にでも入って撒ければいいんだろうけど、生憎この辺の土地勘がない私にとってはそれは博打でしかない。


それに、いくら肝っ玉が据わっていると言ってもこの状況でそれをする勇気を私は持ち合わせていなかった。





「どんだけ現れんだよ!」



そうこう考えている内に右方から現れた新たな追っ手。


幸か不幸か、目的地である待ち合わせの公園へ向かっているけれど、この状況じゃ聖達とは合流出来そうにない。



今の私はBDの幹部、“レイ”。


聖達の姿を見られたところで正体はバレないだろうけど、出来れば“レイ”の姿で関わりを持つのだけは避けたかった。



じゃあ、どうすればいい?


待ち合わせをしている以上、どうにかして聖達に今の状況を知らせたいんだけど。