工場地帯を抜け、田んぼを抜け、前方に見えてきたのは中心街から少し離れた所にある住宅街。
ここまで来れば車だけじゃなく、バイクや自転車、犬の散歩をしている人達が除々に増えてきた。
暗闇で走るのもいいけれど、賑やかな場所を走り抜けるのも結構好きだったりする。
行き交う人々を視界の端に捉えながら気分良く走っていた───その時。
───ヴォンヴォンヴォンヴォン。
まるで口裏を合わせたかのように一斉に鳴り響いたバイクのエンジン音。
後方から聞こえたその音に直ぐ様振り返れば、数十メートル先にあったのはいくつもの光で。
「………チッ」
それが何の光かなんて考えるまでもなかった。
……噂をすればなんとやら、ってね。
自然と引き上がった口端。
こんな状況にも関わらずどこか愉しんでいる自分がいて、ほとほと呆れる。
けど、愉しいものは仕方ない。
「──いいよ。付いて来れるものなら付いて来いよ」
そう言うや否や、私はアクセルを全開にした。
けど、それも計算の内だったらしい。
敵サン達もスピードを上げ、必死に食らいついてくる。


