白銀のヴィーナス




「じゃ、また明日」

「あぁ。気をつけて帰れよ」

「分かってるって」



意外に士騎って心配性だよね。私、見た目男なのにさ。







あれから我が家のようにくつろぎ倒した私は、ちゃっかりと晩御飯までお呼ばれした。


それなのに一番先に帰る私。


って言っても、先に帰るのは今日が初めてで、いつもはみんなと同じ時間までちゃんといる。



けど、今日は特別。


聖達と合流する約束をしていたから「先に帰る」と前もって言っておいたのだ。


流石に何の用事かまでは言ってないけどね。




「じゃあ」

「あぁ」



吹き抜けになっている二階の廊下。


その廊下の柵に凭れて私を見下ろしている士騎が、じゃ、と小さく手を上げる。


それに軽く手を上げて応えた私は、バイクのエンジンをかけると周囲にいたBDメンバー達に一言声を掛けてアクセルを捻った。






倉庫を出れば、途端に私を襲う真っ暗な闇。


周囲に工場や田んぼしかないせいか、20時すぎにも関わらず車のライト一つ見当たらない。


点々と光り輝いている街灯の光だけを頼りにバイクを飛ばせば、まるでサーキット場で走っているかのような高揚感が身体中を走り抜けていく。



頭から足の爪先まで全身をなぞる涼やかな風。


空を仰げば、煌々と光り輝いている綺麗な満月が私を優しく見下ろしていた。