白銀のヴィーナス






「レイ」


「………っ」


士騎に呼ばれてハッと我に返った。


どうやら自分の世界に入り込んでしまっていたらしい。



ゆっくりと振り向けば、鋭い目をした士騎と目が合って、ジッと探るように見据えられた。



「レイ、県内のチームでお前の顔と名前を知らない奴はいない」

「………」

「お前が一番危ねぇってこと、分かってるよな?」





“私が一番危ない”





そんなこと言われなくても分かっている。


逆に何故今まで私が襲撃されていないのか不思議に思ってるぐらいだ。




「分かってるよ。狙われるの覚悟で入ったし」




そう。


“幹部”として入ると決まった時点で狙われることを覚悟していた。




県内トップのチーム、Black Deity。


不良から絶大な支持を受け、トップに君臨し続ける絶対的支配者。



そんな彼等に憧れを抱き、チームに入りたいと願う者は数多くいる。


けれど、その願いの大半は受け入れられることはなく、まずは傘下である“風神”か“雷神”へ入らなければいけないという決まりがあった。