命令なんて到底従いそうに見えない総長様が副総長である士騎の言葉で動く。
なんだか凄い光景を見てしまったような気がするけれど、考えてみればじゃんけんで決めたツートップだから総長も副総長も関係ないのだろう。
なんて一人で考え込んでいると。
「サキ」
咲斗に寄って行った綺人が抑揚のない声で咲斗の名前を呼んだ。
「はいっ!」
すると、何度揺すっても起きなかった咲斗がつい今まで寝てたとは思えないほど大きな声で返事し、しかも勢いよく飛び起きた。
「……嘘だろ、オイ」
流石の私もこれには驚愕。
だって、あんなにも揺らして起きなかった咲斗が綺人の一声で飛び起きるなんて………って。
「あ、そういうことか」
だから綺人が起こしに行ったって訳ね。
「そーゆーこと」
私の言葉に士騎が呆れたように肩を竦めて見せる。
どうやら、咲斗クンは綺人の呼び掛けにしか反応しないらしい。
だから綺人は文句一つ言わずに咲斗を起こしにいったんだ。
咲斗、綺人のこと崇拝してるもんね。それはもう声だけで反応してもおかしくない程に。


