「油断してると痛い目合うからな」
「ハイハイ。いつでもどうぞ」
おっかない言葉とは裏腹に、小さな笑みが浮かべられている蒼介の口元。
ホント、喧嘩が好きでしょうがないんだな。
ククッと心中で苦笑し、蒼介にヒラヒラと手を振って目的地である幹部室へと歩みを進める。
「あ、やっと来た。また蒼介くんに掴まってたの?」
「そう」
ドアを開けるや否や、トコトコと私の元へ歩み寄ってきた唯斗。
相変わらず可愛いな、コイツ。
「ん」
「………また?」
突然差し出された右手に条件反射で手を広げると、手の上には見慣れた棒付きの飴玉が一つ。
……好きだね、この飴。
この飴玉を唯斗から受け取ったのは実は今日が初めてではなく。
初めて此処に来たあの日から毎日のように渡されていたりする。
「レイくん好きでしょ?この飴」
「………」
まぁ、飴をくれるようになったのも初めて渡された日に私が“美味しい”と素直に言ってしまった事が原因なんだけどね。


