白銀のヴィーナス


「そりゃどうも」

「……フッ」


面白い。


“好き”と言った訳ではないのに何故か照れている蒼介。

その表情に思わず笑みが零れる。


素直じゃないところがツボだ。




──北河 蒼介(キタガワ ソウスケ)


彼は一週間前、私がBDに来た時喧嘩を吹っ掛けてきた“あの男”だ。


同じ年の蒼介はBDの次期幹部らしく、下っ端の中では一番の実力者らしい。


そのせいなのだろう。

突然現れた私が幹部になった事が気に入らず、喧嘩を吹っ掛けてきたのは。



蒼介はあの日、私に喧嘩を申し込み、その喧嘩で負けたことで私が幹部になることを認めざるを得なくなってしまった。


だが、負けず嫌いの蒼介は幹部どうこうより幹部以外の人間に負けた事が悔しかったらしく、帰ろうと思って幹部室を出た私に再度手合わせしろと言ってきた。


当然私が負けるはずなどなく、一瞬でカタがついて終了。


けど、それでも蒼介は諦めなかった。


あの日から毎日のように私に喧嘩を挑みにくるようになり、今ではもう喧嘩するのが習慣のようになっていた。


喧嘩馬鹿というかなんというか。


でも、そういう所は嫌いじゃない。

近くにもそういう奴が約二名いるからね。