白銀のヴィーナス



──ヴォンヴォンヴォン。



「レンさんこんちはー」

「どうも。っていうか、頭下げなくていいって言ってんだろ」


何回言わせれば気が済むのよ。




BDに入って今日でちょうど一週間。

初日に頭なんて下げなくていいと言ったのに、来るたび私に頭を下げるメンバー達。



分かってる。

彼等が最も重要視しているのは“幹部”達だということぐらい。


それがこの世界の決まりだってことも。



でも。


それでも私は彼等に頭なんて下げて欲しくなかった。


だって、私はBDに入りたくて入った訳じゃないから。


ただ、自分の目的を果たす為に入っただけ。


BDが全てだと思っている彼等とは思いの深さが違う。










───ガッ!



「……っ、」

「───チッ」

「……不意を突くなんて随分と卑怯な真似するんだな。蒼介」



大知の右拳を握ったまま肩越しに振り返れば、そこには悔しげに舌打ちをする蒼介がいて。



「喧嘩はなんでもアリって言ったのはお前だろ。レイ」


そう吐き捨てるや否や、蒼介は私に掴まれている自身の右手を乱暴に払い落とした。


「まぁ言ったけど」


まさか仲間をダシに使うだなんて思ってもなかったからさ。



チラリ、視線を滑らせれば、さっき挨拶してきた男達がすまなさそうな顔で私に頭を下げていて。


大方、蒼介に私の気を逸らせとでも言われたのだろう。


「お前のそういう所嫌いじゃないよ」


寧ろ好きな方だ。