「よっ。今日も迎えに来てやったぞ」


廊下に出ると、壁に凭れながら携帯を弄っていた男と目が合った。


男は携帯をポケットに仕舞い、ご機嫌顔で私に歩み寄ってくる。



「輝一、今日からBDに行くからいいって言ったでしょ」



ったく、コイツが“彼氏”なんて冗談じゃない。


輝一は仲間であり、お馬鹿丸出しのただの幼馴染みだ。


コイツが彼氏とか、何回言われても鳥肌が立つ。



“彼氏”なんて公言したつもりはないのに、毎日私の教室に迎えに来る輝一を見て勝手に勘違いをしたクラスメイト達。


面倒臭いから放っておいたけど、


「毎日彼女迎えに来る俺って超優しくね?」


調子に乗り始めてきた輝一が超ウザイから、次言われたら否定してやろうかなと思っている。


でも、そういう事にしておいた方が都合良いって言えば良いんだけどね。



「オイ!彩未無視すんなよ!」

「………」


でもやっぱりウザイことには変わりはない。


はぁ、と重い溜め息を吐き出して、キィキィとうるさい輝一を放って先に歩き出す。




「春名さん帰るの?バイバイ!」

「バイバイ」

「あ、春名、また宿題見せて」

「気が向いたらね」



廊下を歩いていると必ずと言っていいほど声が掛かる。

けど、だからと言って特別仲が良いって訳ではない。

クラスメイトだったから返事してるだけ。