「で?アンタにはいない訳?女神」
歴代総長達に女神とやらがいたのなら、現役総長にもいるはず。
そう思ったけど、
「いないな」
どうやら今の黒神は女神不在らしい。
「そ。残念だね。……で、いつになったら総長サンの名前を教えてくれる訳?」
「………」
……って、ちょっとアンタ達全員忘れてたの?
ポカンと間抜け面を曝す幹部達に思わず溜め息が零れ落ちた私。
当の総長様は無表情を貫き通しているが、一瞬眉が動いたのを私は見逃さなかった。
……大丈夫かな、此処。
そう本気で心配し始めた時だった。
「───綺人」
耳に届いたのは、総長様の声。
「一条 綺人(イチジョウ アヤト)、高二。綺人でいい」
「……綺人、ね」
相変わらず無愛想な総長様。
総長がこんな無愛想で良いのかなって思ったけど、そう言えば聖も同じぐらい無愛想だった事を思い出す。
やっぱり似てるかも、この二人。


