白銀のヴィーナス


「早く次いけよ!」


顔を真っ赤にさせて次に行けと促す咲斗にちょっと胸キュンした時、「じゃあ次俺な」とチャラ男が手を上げた。


目が合ったチャラ男はニッと愉快げに笑みを深め、ソファーに預けていた体をゆっくりと起こす。



「俺の名前は倉沢 士騎(クラサワ シキ)。高二。士騎でいいから。よろしく」

「……よろしく」



挨拶と共に差し出された手を控えめに握り返せば、


「……お前、顔だけじゃなく手も女みたいなんだな」


士騎は握った私の手をマジマジと見つめてそう言った。



……コイツ、痛い所を突くな。


流石BDの幹部。

だけど、そう思われるのは想定内。というか、今までも男装する度言われてきたから今更動じる事はない。



「俺、そう言われるの嫌いなんだよね」

「………」



冷めた口調でそう言えば、今の今まで緩んでいた室内の空気が一気に張り詰めたのが分かった。


きっと、私の纏う雰囲気が一変したからだろう。


──クスッ。


これも全部想定内。



「………悪い」



だって、こう言えば誰もこれ以上は踏み込んで来なくなるでしょう?