白銀のヴィーナス



あからさまに嫌な顔をすれば、チャラ男を含めた五人が同時に笑い出した。



「ワザと倉庫抜けたんだよ。コイツが納得してねぇの分かってたからな」



そう言って指差したのはさっき私が喧嘩した男。



「……まさか」



男を見てピンッときた。



「そ。そのまさかだよ」



「はぁ……」



やられた。まさか私がいいように利用されるなんてね。




幹部達が言いたいのは簡単に言えばこういうことだった。



私が幹部になることを納得していなかった下っ端達。


幹部達はそれを逆手に取り、“私”を利用することにした。


下っ端達を納得させるには新入りの実力を見せるのが一番手っ取り早い方法だということを分かっていたからだ。



自分達がいなければ納得していない下っ端達は必ず新入りに喧嘩を売りに行くはず。


そう踏んだ幹部達は、私が来ると知っていながら倉庫から姿を消した。




そして今日。

幹部達の思惑通り私が幹部になることを納得していない下っ端達は倉庫にやってきた私に喧嘩を売った。



「良かったな。認められて」



──全て幹部達に仕組まれていたことだというのも知らずに。