そう心の中で言う方が早いか否か。
私の体は男の拳が向かってくるよりも先に動き出していた。
「は?」
つい今まで目の前にいた私が突然消えたから驚いたのだろう。
けど、そんなこと知らない。
「本気出せって言ったのはアンタだよ」
そう男に告げた時にはもう、男は私の手の内にいた。
「は?え?」
状況が理解出来ずにいるのか、目上にいる私を見て目をシパシパと瞬かせている男。
そんな驚かなくてもいいじゃない。
ってまぁ、本当に一瞬だったからね。男が驚くのも無理はないか。
っていうかそんなことよりも。
「……疲れた」
掴んでいる男の首根っこを離し、首を回してコキコキと鳴らす。
あー、良い音。
やっぱ運動の後はコレだよね。


