白銀のヴィーナス



「遅いよ」


膝を折ってかわせば、かわされると思っていなかったのか男の顔が悔しさで歪み、すぐさま次の攻撃が飛んでくる。


けど、残念だがそれも私に当たることはない。


それでも男の攻撃は止まらなかった。


次々と繰り出される手足をひらりひらりと軽やかに舞ってかわしていく。




案外しつこいなコイツ。

いくらやっても当たりなんかしないのに。



……そう言えば。



諦めの悪い男を見てふとこの前の喧嘩のことを思い出した。


私がBDに勧誘された二日前のあの喧嘩。


あの時私に立ち向かってきたあの男も諦めが悪かった。


まぁ、あの時と今とでは状況が違うけれど。

今の私は攻撃を避けるだけで手出していないしね。




倒そうと思えば一瞬で倒せるけど、この男はこれから“仲間”になる奴で。

出来れば傷付けたくはない。



けど。



「テメェ、ナメてんのか!!本気出さねぇ奴なんか絶対認めてやらねぇ!!」



そうは言っていられない時だってある。



「……ふーん。なら仕方ないね」



ご要望らしいから仕留めてあげる。