白銀のヴィーナス



……あぁもうホント面倒臭い。


「分かったよ。やればいいんだろ」


面倒臭すぎてさっさと済ませたくなった。



気だるげに発した私は私の胸元を掴んでいる男の手首を掴むと、邪魔だと言わんばかりに払い落とす。

そして、来いよ、と人差し指で挑発して見せた。


すると、途端に怒りの色に染まる男の表情。



「ぶっ潰してやる!!」



叫び声よりも先に飛んで来た男の右拳は思ってたよりも速くて。

でも、かわせない速さではなかった。


私は後ろへ反り返り、男の攻撃を難なくかわす。

そしてその後、トントンと二歩ほど後退して首をぐるりと回した。


次の瞬間。



私に背中を向けていたはずの男から突如繰り出された回し蹴り。



──けれど。



「……チッ」



そんなもの私に通用するわけがない。