チラッと丘の上を見れば、案の定そこには聖達の姿があって。
顔は見えないけれど、きっと呆れた表情で私達のやり取りを見ているのだろう。
あそこからだと会話が聞こえないからタイミングが分からないんだろうけど、どうせならもう少し待って欲しかった。
だってまだ何の“餌”も撒いていない。
「……オイ、お前は誰だ?」
──いや、少しは撒けたみたいだ。
「すぐに分かるよ」
そう言った私は、ニッと口角を引き上げた後、クルッと踵を返してその場から逃げ出した。
「ちょ、オイ!テメェ待ちやがれ!!」
まさかこの状況で私が逃げるとは思ってもいなかったのだろう。
男達が口々に私を呼び溜める。
けれど、すぐに私が逃げ出した理由を悟ったようだ。
「……オイ、綺人(アヤト)サツが来やがった!!」
聞き知ったサイレンの音に慌てふためき始め両チームの幹部達。
即座に下っ端達に指示し始める。
彼等は下の奴等を逃がさなきゃいけないだろうから、きっと私に構ってる暇なんてないのだろう。
惜しいけど仕方ない。
私の存在を知られただけでも良しとするか。
そう思って一安心していたのも束の間。
「……チッ。士騎(シキ)」
「分かってる」
事もあろうか、BDの幹部が二人、私を追い掛けてきたではないか。


