「待って!」
坂道を滑り下り、女の子の背中に制止の声をかけるも女の子が止まってくれる気配はない。
「チッ」
目を凝らしてよく見れば、女の子の右手には携帯電話が握られている。
どうやら音楽を聞いているらしい。
その証拠に、耳にイヤホンがつけられていた。
私は叫ぶのを諦め、持っている力を全て足に集中させて思いっきり地面を蹴り上げる。
間に合って……!
それか奴等の存在に気付いて!!
蹴り上げた反動で木の葉が軽やかに宙を舞い、体が空を切る。
視線はまっすぐに女の子だけ見据えていて、乱れる呼吸が少しずつ体力を奪っていく。
それでも私は走った。
けれど、間に合わなかった。
私が女の子に手を伸ばすよりも先に男達が女の子の存在に気付いてしまったから。
「……っ!」
男達が一際大きな笑い声を上げた時、ようやく女の子が男達の存在に気付いたけれどもう遅い。
女の子の足が一歩下がるよりも前に奴等に右腕を捕らえられてしまった。
だけど、それを私が許す訳がない。
「女の子は渡さない」
そう小さく呟いた私は思いっきり地面を蹴り上げ、宙を舞った。
「なっ!?」
突如女の子の後方から現れた私に、最大限に目を見開く男。
けれど。
「気付くのが遅いんだよ」
次の瞬間にはもう私の右足は男の左頬に命中していた。


