……ったく、何が俺の女になれよ。
ふざけんじゃないっての。
「色気づいてる暇があったら“綺羅”をどうにかしたら!?」
これ以上士騎の相手をしてると頭が痛くなってきそうだ。
早く退散しよう。
フンッと一つ鼻を鳴らして、くるりと士騎に背を向けて歩き出す。
けど、
「待てよ!」
それはまたしても士騎の手によって阻まれてしまった。
「しつこい!!」
伸ばされた手を思いっきり払いのけて、文句の一つでも言ってやろうと振り返れば、自身の右手首を掴んでいる士騎の姿があって。
その手の甲には私の爪痕がハッキリと残されていた。
「………」
だからといって素直に謝る私ではない。
私を見据える士騎からフイッと目を背け、踵を返す。
数歩歩いたところで「ぜってぇ見つけてやるからな」と背後から投げ掛けられたけど、無視してその場から立ち去った。