白銀のヴィーナス


「どうしたの、櫂」


櫂がそんな顔してるなんて珍しい。


肩越しに振り返れば、何故か焦った表情で私を見ている櫂がいて。

そのただならぬ表情に、私は訝しげに眉を引き寄せた。



「か───」

「女の子が、奴等の方へ向かってる」

「……え」



私から視線を外した櫂が雑木林の方へと振り向き、丘の下を指差す。


更に視線を辿っていけば、櫂の言った通り、丘の下にある遊歩道を一人の女の子がBD達のいる方向へと歩いていってる姿が見えた。



「……っ」



その姿を視界に入れた瞬間、私の両足は突如方向を変え、地を蹴り上げた。


そして、雑木林に向かって躊躇いもなく一気に滑り降りる。



「彩未!!」

「ちょ、マジかよ!」



後方でみんなの叫び声が聞こえたけれど、今の私のは全く届いていない。


そんな事よりも、早くあの子を止めないと。


こうして滑り降りている間にも、女の子は先へ先へと進んでいて。あと十メートルもすれば広場へと踏み入れるだろう。



お願いだから、間に合って……!!

じゃないとこのままじゃ確実に巻き込まれるっ!