白銀のヴィーナス


「離してっ!」


一筋縄ではいかないと悟ったらしい士騎は、今度は逃がすまいと右手を伸ばしてきた。


どうやら両腕を拘束しようとしているらしい。


それにいち早く気付いた私は、その手を乱暴に振り払うと士騎の腹部目掛けて右足を繰り出した。



「……チッ」



けれど、それは寸でのところで交わされてしまい、右足は何の衝撃もなく元の位置へと戻ってくる。



……しょうがない。こうなったら本気を出すしかないか。



“レイ”の仲間である士騎に暴力は振るいたくないけれど、逃げるためにはこうするしかない。


士騎には悪いけど、少しだけ痛い目に合って貰おう。




ガッチリと掴まれている左腕を一度押して反動をつけ、自分の方へと引き寄せる。


そして、士騎の体が前後にフラついたところで再び右足を蹴り上げた。



「……ッ、」


右足が命中したのは士騎の腹部ど真ん中。


これで右手の力が緩むはず。



そう思っていたのに。



「……ッテェ。お前、いい蹴り持ってんな」


「……なっ」



士騎は倒れるどころかその体勢のまま私の左手首を掴んできた。