「櫂が着いて来てくれるって言ったし」

「何だよ。俺だと不満なのかよ」



ムッと眉を潜める輝一。



「そうじゃないけど……喧嘩したいんでしょ?」

「まぁ、してぇけど、でもそれよりもお前の方が……ってもう良いだろ!ホラ、さっさと行くぞ」

「ちょ、引っ張んないでよ」



面倒臭そうに返事した輝一が私の腕を乱暴に引っ張る。



……ったく、誤魔化そうとしてるのバレバレなんだけど。

素直に心配してるって言ったらいいのに。



何だかんだ言っていつもこうやって私の傍にいてくれる輝一は、恥ずかしいのか何なのか、言葉では絶対に言ってくれない。


でも、私は知ってる。


聖達には心配してるって言ってくれてるのを。



「だーかーら、痛いっての!」

「イテッ。イチイチ殴んなよお前!」

「輝一が悪い」

「はぁ?」



まぁ、知ってるって言ったらとばっちり受けそうだから言わないけどね。