扉を開けると、チリンチリン、という鈴の音が響く。



「いらっしゃいませ。」



迎えてくれたのは、オーナーだろうか。

綺麗な顔立ちだけれど、どこか冷たい雰囲気の男性だった。



「あの、面接をお願いした新庄莉子と申します。」


「あ、新庄さんね。ちょっとこっちに来てくれる?」


「はい。」



オーナーについて、店の奥に入る。

厨房を通り過ぎると、その奥に個室の部屋があった。

オーナーが扉を押さえつつ、私の腰のあたりを片手で押す。

なんだか、落ち着かなくなる。



「どうぞ。」


「失礼します。」



オーナーが出してくれた椅子に座る。



「紅茶でいい?」


「あ、はい。すみません。」



慣れた手つきで紅茶を注ぐ彼。

思わず見惚れてしまう。

やっぱり、プロは手つきが違う。



「どうぞ。」


「ありがとうございます。」



まだ残暑が厳しい9月。

オーナーが注いでくれた紅茶には、氷が入っていて。

テーブルに置かれるとき、カラン、と涼しげな音がした。