先生は、歩が帰ってくるまで一緒にいてくれた。


そして、次の日の朝。



「あ!」


「どうしたの、歩。」


「サンタさん、来た!」


「え?」



歩の視線をたどると、リビングの隅に、隠すように置かれた包みが見えた。

まさか、と思う。

だけど、私が置いたわけでもない。



「わあ、これ僕にだって!莉子姉のもあるよ!」


「え?」



歩がはしゃぎながら、包みを開ける。



「あっ!」



包みの中からは、マフラーと手袋が出てきた。



「やった!これでもう、寒くないよ!」



莉子へ、と書かれた包みをゆっくりと開ける。

すると、そこには歩と色違いのマフラーと、手袋が入っていた。



「わあ!」



クリスマスプレゼントなんて、貰ったことがなかった。

それは歩も同じだ。

だから私たちは、きっと世界中の子どもたちのなかで、一番くらいに喜んでいたね。


手袋を嵌めてみようとして気付いた。

じわっと視界が涙に覆い尽くされる。

私は慌てて、上を向いて涙をやり過ごした。


手袋の中から、ハンドクリームが出てきたんだ―――



「歩、サンタさん、来てくれたね。」


「うん!」


「歩がいい子にしてたから、今年は来てくれたんだね。」



頭を撫でると、歩は照れたように笑う。

じわじわと、心が温かくなる。


先生は、人を驚かせるのが得意だ。

それに、人を喜ばせるのも、得意だ。


その日の通学路は、きっと歩も寒さなんて感じなかったね―――