帰ってきた歩は、満面の笑みで何かを抱えていた。



「歩!それ何?」


「みっちゃんに買ってもらった!」


「えっ!」



大事に大事に、両手で胸に抱えている大きな包み。

それを開くと、中からバットとボール、それからミットが出てきた。



「先生、」


「ああ、気にするな。俺からの歩へのプレゼントだ。」


「跡部先生……」



見る見るうちに視界がぼやける。

歩の最上級の笑顔も、跡部先生の微笑みも、ピカピカのバットも―――

すべてがぼやけて、優しく混じり合う。



「ありがとっっ!」



涙をごまかすように先生に飛びついた。



「おい、何だよ。」



笑いを含んだ声で先生は言いながら、私の背中をぽん、と叩いた。


ありがとう、ありがとう先生。

お金とか、ものじゃなくて。


私が一番大事にしている歩のことを、同じように大事にしてくれて、ありがとう―――



その日、歩は寝床までバッドやミットを持って行って。

両手で抱えたまま眠っていた。

ずっとずっと、微笑んだまま。



「先生、」



私も歩と同じで。

先生の優しさを胸に抱きしめながら、ほろり、と涙をこぼして眠りについた。