彼女はいつもの癖で飲めないコーヒーを思わず頼んでしまい、口もつける事が出来ず手持ち無沙汰にしている。彼が資料に目を通している間、何気なく外の景色に視線を移した。
 仲睦まじそうな恋人達が手を繋ぎ行き交う中、彼女と同じ境遇の人達もチラホラ見える。そんな人を見かける度に、休日に仕事をしているのは自分だけじゃないんだと侘しい気持ちが少し緩和される様だった。

(もうどれくらい手を繋いでないかな)

 小さく息を吐いて視線を店内に戻すと、良く見ればそこもまた恋人達でひしめき合っていた事に自然と溜息が零れ落ちた。
 対面に座ればいいものを、二名席のソファー側に窮屈そうにして並んで座っている恋人達。そういった光景を見ると、羨ましさを通り越してイラつきを覚える。じっと観察しているのを気付かれない様にそっとテーブルの下を覗くと、そこでもまた当然の様に二人の手が繋がれていたのがわかった。