お昼を回り結果報告をすると……ドッジボールもバレーボールも一つ目の試合で負けてしまった。サッカーはいいとこまで行ったんだけど、あえなく敗退。残るはバスケだけになった。

バスケの試合はまだまだ先なんだけど、でもどう時間を確認しても、私はサッカーの得点係と被ってしまって見られそうにない。

ヤト君の活躍をぜひこの目に収めておきたかったけど、我が儘はできない。こればっかりは仕方のないことなのだ。



「アラン先輩は……5組。ソラ先輩は……6組」



一応クラスを確認してから本人たちを探す。赤ゼッケン対青ゼッケン。どっちがどっちなのかは今確認しようとしてるとこ。

視線を巡らせると……あ~いたいた。アラン先輩が青でソラ先輩が赤だ。

4年生ともなると、ある程度感情をコントロールできるから魔法でボールをどうこうさせてしまうことはあまりない。卒業を控えている身にとってはボールを云々させてしまったら大問題になるからだ。


どちらを応援しようかと考えあぐねいている間に試合が始まってしまった。この際応援はやめにするか……ってこれが本来の姿なんだけど。

サッカーのルールはあんまり覚えてないけど、前半後半に試合が別れていてキーパーがゴールを守って、手はキーパー以外使ってはいけないこと。

ボールは足だけで蹴って進んでゴールにシュートして入れば得点になる。ドリブルの速さやフットワークの切れ味、そしてチームワークが胆なんだって誰かが言ってた。


その試合が今、目の前で繰り広げられている。


今ボールを蹴っているのはソラ先輩で、アラン先輩が横から忍び寄っていた。その気配に気づいたソラ先輩がメンバーにパスしてゴールまでの距離を縮める。

ボールが何度か宙を舞った後、それはゴールへとシュートされた。でもそれはぎりぎりゴールから外れてコートから出る。

奥のゴールで展開されているバトルだから、こちら側で観戦してる私たちにとってはなんだか掴み所のない勝負だ。早くこっちのゴール……つまりアラン先輩たちのクラスが優勢になってくれれば面白いのが見られるのに。

……とにかく小さい。本人たちには申し訳ないけど、とにかく遠い。


呑気に欠伸を噛み締めていると、ボールがだんだんこちらに近づいて来ていた。つまりアラン先輩のクラスが優勢になったのだ。


ぽーんと飛んだボールを蹴りながら速いスピードでドリブルしてくるアラン先輩が見える。応援の方から歓声が上がった。でもそれは赤っていうよりは黄色って感じで……

アラン先輩がモテるというのはウソではないのだと確信した。


得点係からすれば、早くシュート決めないかなーと退屈な時間。それを破ってくれそうな勢いに、知らずのうちに得点板を掴む手に力がこもる。

行っけーアラン先輩!


アラン先輩はいったん他のメンバーにボールを渡すと、ゴール前に勢いよく走った。その行き先にパスを受けたメンバーがアシストを出してアラン先輩がいっきにシュート!


……やった!ゴール!


私は上機嫌で点数を捲った。0という間抜けな数字から1に変わる。それだけでもテンションが上がるとともに、サッカーって大変なんだなって思った。コートは広いし邪魔は入るし。ユラがやったらきっと悪態をつけまくるんだろうな。


邪魔!退いてよ!足邪魔だってば!

……うん。言いそう。


得点板から顔を上げると、私を見ているアラン先輩と目が合った。軽く会釈すると、軽く手を振り返された。でもすぐにメンバーの輪に戻ってしまったけど。

そんな私って空気が読めないのだろうか。

横から大勢の好奇の目が私の身体に突き刺さっていたのにまるで気づかなかった。それは男女問わずで、特に女子からは黒いオーラが出ていた。

……それにまるっきり気がつかない私は鈍感なのだろうか。