息子の俺には、
昼飯一つ作りゃしない。


おふくろが買い物いっても、
俺のものは買ってこないのに
こうやってちゃっかりアイツに
食わせたい食べ物だけは買ってくる。


言われるがままに
家用の冷蔵庫を開けて覗き込むと
すき焼き用の牛肉がパックの中で
綺麗に並べられている。



それを手に掴んで、ガスの方へ行く。
その最中、
ズキっと膝辺りに痛みが走る。



思わず立ち止まって、
その場で膝に手を当ててさすりながら
ゆっくりと屈伸してみる。



うんっ。


大丈夫そうだ。




そのまま気にせずに、
アイツの弁当作りを終わらせる。



そして完成した二段弁当を
バイクに詰め込んで、
病院まで走らせる。





通いなれた道のり。







病院の玄関から弁当を抱えて
中へと入ると、
病院関係者と書かれた
フロアーの方へと
患者さんたちの間をすり抜けていく。





「すいません。
 井津です。

 今、安田医師いますか?」



関係者入口の前で、フロアー案内をしてる
病院スタッフに声をかける。



お姉さんはいつものように、
スタッフルームらしい部屋を覗いてくれる。