しっとりと   愛されて

「私の正式な赴任期間は2年なの。孝二さんは?」

「俺の立場じゃ、2年と言っても行ったり来たりだ。それ以上だと覚悟しているよ。」

「パーティーで社長に会ったの。帰国休暇をもらったわ。」

「へぇ、直々に?異例だな。」

「常務も驚いていたわ。」

「何かなければいいが。」

「どうして?」

「社長は余り知られてないが、ある意味で女好きなんだ。」

「何、それ?」

「自分の好みで秘書を選ぶ。彼に目を付けられたら秘書にされるかもしれない。」

「香川女史は次の社長秘書だっていう噂よ。竹林秘書もナンバーツウだって聞いたわ。」

「それは回りの人間が騒いでいるだけだ。今の社長秘書はどこから来たか知らないのか?」

「秘書課でしょ?」

「いや違うよ。どこかのお得意先から秘書ハンターしてきた女だ。」

「それ、本当なの?」

「君は社長に言われたらどうするんだ?」

「私が秘書に?」

「そうだよ、可能性大だ。」

「もちろん、断るわ。この2年間の赴任生活が終わったら会社を辞めるわ。」