少し回想に浸っていると、あゆ姉と光流が俺の背後にあった裏口に向かって手招きをした。
そういえば、真冬がいないことに今気づいた。
真冬は、俺の顔を見て気まずそうにしたけれど、小走りでこっちにやってきて、すぐにあゆ姉の後ろに隠れた。
「い、いいですよ…。美人で寂しがりやな彼女の惚気話をしても…。真冬はめげま…せん」
「紺ちゃんサイテー。真冬泣ーかせたー」
「サイっ、テー…」
こんな理不尽な中傷ってあるだろうか。
光流たちは完全に真冬の味方。なぜ俺がこんなにも白眼視されなければならないのだろう。
二人は散々俺の悪口を言ってから、掃除が終わるとさっさと店を出ていった。
さっさと帰れ、と心の中で15回くらい思っていたから清々した。
残った真冬と一緒に電気を消して、2階へと上がった。
真冬は由梨絵の話を聞いたせいでかなり落ち込んでいるようだった。
そんなに落ち込むところだろうか。
光流の話によると、俺に彼女がいることは知っていたはずなのに。
手すりが赤錆だらけの階段をのぼり終えると、真冬が暗い表情のまま口を開いた。
「美人なんですね…やっぱり…紺君の彼女さん…」
落ち込みどころはそこだったのか。
俺はそんな一言を華麗に流して、ポケットから鍵を取り出した。
けれど、その鍵を真冬に奪われた。一体なぜ。
「………返してください」
「紺君は面食いなんですか。結局顔なんですか」
「…あの……返してください」
「そんなんじゃあたし完全に勝ち目無いじゃないですかー!」
鍵を持っている方の手で肩を叩かれた。痛い。
俺は、真冬の手首をパシッと掴んで、動きを止めた。
それから、彼女の小さな手から鍵を無理矢理奪いとった。
「…なんで俺なんですか」
「え」
「俺なんかを好きになる理由が1つも見つかりません」
そう言うと、真冬は目を丸くしてから、屈託なく笑った。



