「んだよ、病人にはもっと親切に…「早く中に入ってよ」




 チッと舌打ちをうってから葉上は渋々中に入った。私はそのあとを追うように、801号室へと入り、ドアを閉めた。





 中も綺麗で、予想通り。キョロキョロと周りを見ていたら「こっちだ」とかすれた声が前から聞こえ、私は前へ急いだ。




 案内されたのは彼の部屋らしきところ。





「……独りなの?家族の方は?」


「いねぇよ」


「え、もしかして…」


「ちげぇ。一人暮らししてんの」




 あぁ、そっちね。家族はいないって言うから、亡くなったのかと…。って、なに縁起の悪いこと思ってるの、私。



 ……まぁ、私は家族がいないも同然なんだけど。