君とさよならの時間 ~大好きの涙~





 でも私は、怖くても弟の顔をずっと見続けた。


 現実から目を離したくなかったから。






「か、母さん!!」





 弟は家に一度入り、お母さんを呼んだ。



 え…?お母さん呼んじゃうの?




 ちょっと予想外な行動に、思わず目が点になる。




「もう帰ってきたの?」


「違うよ!!姉ちゃんが、いるんだよっ」


「え、……愛美が?」





 扉が全開だったから、家で話してる会話が筒抜け。



 「愛美」と呼んだお母さんの声は、私に少し似てた。





 私のこと、お母さんも覚えててくれたんだ…。


 ――じゃあなんで、お見舞いに来てくれなかったの?