どちらにしても、今までのお調子者男子には見えなくて、ちょっぴり戸惑った。



「来てくれて、ありがとうな」


「こちらこそ、ありがとう」



好きだって思ってくれて、嬉しかった。



「よし、俺、野球部行くわ」



野球部は夏に引退したけど、たまに行って後輩たちの腕を鍛えているのだとか。



先生から受験生は帰れと怒られても聞く耳はもたないらしい。



グラウンド目指して駆け出した彼にもう一度感謝を伝えたくて、私は叫ぶように言った。




「ありがとう!!」




好きだと伝えてくれて嬉しかったよ。



中田は振り向くことなく、右手を拳にして思いっきり上に伸ばした。


宙に浮かんだグーの形が、次の瞬間、ピースの指の形に変わった。