その日は、病院で母子手帳をもらって。

複雑な気持ちで、帰ってきた。


母親になるんだという責任が、初めて私に突きつけられた気がしたんだ。

これからは、私が母親として、この子を守って行かなくてはならない。

どんなことがあっても―――


それに、この子を片親にしてしまうかもしれない。

私も、幼い頃に父を亡くしたから、その寂しさは分かっている。

私が働きに行く間、この子はいつも一人なんだ。

お父さんは自分を捨てた、と思うかもしれない。

ずっとずっと、一生、その想いを抱えていかなくてはならないんだ。



「ごめんね。」



まだ、外見ではちっとも、妊娠してるなんて分からないお腹。

私は、そのお腹に手を当てて、泣きながら謝った。


こんなお母さんでごめんね。

せっかく私たちのところに来てくれたのに。

こんなに弱いお母さんでごめん。

泣いたりしてごめんね。


だけどね、キミは。

お母さんと、お母さんの大好きな人との間の赤ちゃんだから。

だから、お母さんにとって、何よりも大切な存在なんだよ。

大好きな人と、お母さんのDNAが半分ずつ混じり合ったキミ。

大好きな人に会えなくても、キミの瞳を覗き込めばそこに、必ず陽さんがいるはずだから―――



「待ってるよ。」



キミに、なんて名前をつけようか。

まだ、男の子か女の子かも分からないけれど。


どっちにしても、太陽の陽の入った名前にしよう。

そうしよう。


まだ見ぬその子が、先生に似ていることを望んでる。

いつでも寂しくないように。

ううん。

似ていたら、思い出してしまうかもしれないけれど。


いつでも、先生を近くに感じられるように―――