何か、途方のないものを感じる。

紛れもなく私に向けられた、何者かの鋭い憎しみ。


誰なの?

どうして私なの?

先生に、関係があるの?


分からないことだらけで、考えれば考えるほど混乱してくる。



その時、インターフォンが鳴った。

私はドキッとする。

思わず胸に手を遣ると、鼓動はドキドキと激しく打っていた。



「ピンポーン、ピンポーン」



先生?

先生なの?

先生であって、お願い!



「ピンポーン、ピンポーンピンポーン」



違う、絶対に違う。

先生だったら、何度も押したりしない。

声を掛けてくれるはず。



「ピンポン、ピンポンピンポンピンポン……」



明らかに異様な速度で連打されるインターフォン。

しばらくして、その音が止んだ。

しんとなって、私は少し胸を撫で下ろす。



その時、カタン、という音が聞こえた。

あ、何かをポストに入れたんだ―――



辺りをうかがう。

もう物音はしない。

諦めて帰ったのだろうか。



忍び足で玄関に向かうと、扉についているポストの中を確かめる。

あ、手紙。

その手紙を取ろうと手を伸ばした時―――



「きゃっ!!!」



私は、仰向けに転んで背中を玄関に打ちつけた。

見ると、両足首を何者かの手が掴んでいる。

真っ白な手。

ベージュのマニュキアが塗ってある手。

ネコ用の出入り口から、にゅっと出ているその二本の手。



「いやっ、やめてっ!離して!」



強い力で掴まれて、立つこともできない。

足首に爪が食い込んで痛い。



遠くから足音が聞こえてくると、その手はあっけなく離れた。

そして、再びネコ用の出入り口から消えて行った。


私は、呆然としてそこに座り込んでしまった。