今日はどんな楽しい事が待っているだろうかと、ワクワクしながら観光道路に沿って自転車を走らせる。
右側に広がるのは、父さんと祖父ちゃんが作っている、広大なジャガイモ畑だ。
大人の膝丈程に成長した一面の緑のジャガイモの葉と、その中に星空みたいに散りばめられた小さなジャガイモの花。
ジャガイモの花って本当に星みたいなんだ。
5枚の花びらが五角形の星型を形作り、中心には鮮やかな黄色の花心。
花びらの色は品種によって違う。
“メークイン”は紫と白が斑(マダラ)に混ざっていて、
“男爵(ダンシャク)”は白に近い薄紫。
“とうや”は白で“キタアカリ”は赤紫。
白と紫色の星型のジャガイモの花が、一面の緑色の中に揺れる様は綺麗だよ。
前に「地上の星空だね」って父さんに言ったら、
「お前やっぱあいつの子だな」って笑われたけど。
男爵の畑の中で中腰になって作業している、父さんの後ろ姿が見えた。
アスファルトの道から土の農道に自転車を乗り入れ、父さんの近くまで行きブレーキをかけた。
「父さん!」と呼び掛ける。
作業着姿の大きな体がこっちを向いた。
自転車を止め、食べずに持ってきたフランクフルトを空に掲げる。
「父さんのオヤツ、もって来たよ!」
作業を中断した父さんは、軍手を脱ぎながら畝(ウネ)の間を抜け、俺の横に立つ。
大きな手の平が頭に乗せられ、頭上から苦笑い混じりの低音ボイスが降ってきた。
「お前…フランクフルトを、自転車のカゴに直置きかよ…ワイルドだな」
「カゴの中、ティッシュで拭いて入れたから大丈夫だよ」
「おう。気遣いありがとよ」
父さんは俺の手からフランクフルトを受け取ると、上半分を一口で食べ、残りを「お前の分」と言って返してくれた。


